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ClientEarth

2021年6月1日

日本国内最後の石炭火力発電所新設計画が破棄に

日本で最後の石炭火力発電所2基の新規建設計画が、経済性の懸念から断念され、気候変動にとって大きな前進となりました。

関西電力と丸紅は先日、政府の脱炭素規制強化と銀行の新規石炭火力発電所建設への融資制限を理由に、秋田県での130万kWのプロジェクトを石炭火力発電所新設計画として断念することを発表しました。

これに先立ち、大手電力会社のJ-POWERが、本州最西部の山口県宇部市における石炭火力発電所の新設計画断念を決めています。同地域の電力需要は横ばいで推移すると見込まれ、再生可能エネルギーとの競争が激化していることを理由に挙げています。

宇部の発電所計画には、地域の環境や住民の健康に及ぶ悪影響や、日本が2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにすることを目指す中、その気候への影響を懸念して、活動家たちが強く反対してきました。

ClientEarthのリーガルアドバイザーである山下朝陽弁護士は次のようにコメントしています。「宇部と秋田における石炭発電所新設計画の破棄は、気候変動にとって大きな前進で、石炭はすでに経済的に見て持続不可能な資源であるという長期にわたる議論の正しさを認めるものに他なりません。

日本には、風力発電などの膨大な潜在力をもつ再生可能エネルギー資源があり、それは、日本の総電力消費量をはるかに上回る可能性を持っていますこのような新規石炭火力開発は、日本のネットゼロ・コミットメントを破綻に導くだけでなく、クリーンエネルギーへの移行がもたらす経済、環境、事業の機会を明示している市場の動向から全く逸脱したものです」

当初の出資者であるJ-POWER、宇部興産、大阪ガスの3社は、2015年に宇部工場の建設計画を発表しましたが、大阪ガスは2019年に規制の強化と競争激化の中で事業環境が好ましくないことにより、プロジェクトから撤退しました。

しかし、J-POWERと宇部興産は、明らかに経済的リスクがあるにもかかわらず、当初の120万kWから60万kWに規模を縮小して開発を継続するか、炭素排出量が少ないとされる石炭ガス化複合発電(IGCC)発電所に切り替えることを公式に表明しました。

石炭火力発電所に対する反対活動を行っている環境NGO「気候ネットワーク」によると、同発電所の建設中止により、少なくとも年間360万トンのCO2排出が回避されるとしています。これは、発電所1基を60万kWとした場合、日本の年間温室効果ガス排出量の0.3%に相当します。

日本にはいまだに150基の石炭火力発電所が存在し、建設中のプロジェクトも幾つかありますが、今回の新設計画断念により、これから新規建設するという「計画」はすべてなくなったことになります。

CCSによる石炭延命

世界的な脱石炭の流れにもかかわらず、日本政府は先日、発電効率目標を達成すれば、2030年以降も石炭火力発電所の操業を認めると発表しました。

2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにするという日本の目標を達成するために、日本の公的機関や民間企業は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)や炭素リサイクル技術の研究開発に多額の投資を行っています。

しかし、ClientEarthの弁護士は、石炭火力発電所から炭素排出をなくす技術の効果、効率性に疑問を呈しており、大規模な実証が行われていないCCSによる解決に過度に依存しないよう警告しています。

ClientEarthのラファエル・ソファー弁護士によると、「石炭火力発電所の新設計画の断念は一歩前進ですが、二酸化炭素回収・貯留技術といった非現実的な技術により石炭火力を延命することなく、よりクリーンなエネルギーシステムへの迅速な移行が必要です」

気候ネットワークは、J-POWERの発表を歓迎する一方で、石炭火力発電の経済的リスクを深刻に受け止めることを石炭火力発電事業者に対して求めました。そして、日本政府に対して、「すべての建設中の石炭火力発電計画を速やかに中止し、目標年次を明確に定めたうえで、既存の石炭火力発電所を着実に廃止していくこと」を求めています。