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2024年10月23日
今年度の株主総会は、日本の上場企業(みずほフィナンシャルグループ)に対して初めて気候変動株主提案が行われてから5年を迎える節目となります。
2024年度株主総会では、日本の主要上場企業において多くの気候変動関連提案が提出され、トヨタを除くほとんどの株主提案が例年を上回る支持を得ました。ファイナンシャル・タイムズは、米国全体では「米国企業の環境・社会問題に対する株主の支持は2年連続で低下している」(FT、『Proxy season results show support for ESG efforts continue to ebb』 7月5日2024年、こちらを参照)と記していますが、日本における気候変動関連提案への支持の高まりからして、「ESGバックラッシュ」論が日本では関係ないことが分かります。
特に興味深いのは、LGIMが今年提出した日本製鉄(日鉄)の気候変動関連のロビイングに関する株主提案の支持率の高さです(27.98%)。また、設備投資と気候変動に関するコミットメントとの整合性、および気候変動に関するコミットメントを達成するための取締役の報酬インセンティブに関する日鉄の他の2つの気候変動関連の株主提案も、同様に高い支持を得ました(それぞれ21.48%、23.01%)。日鉄は日本最大の鉄鋼メーカーであり、生産高では世界第4位です。シンクタンクのインフルエンス・マップの報告書によると、日鉄は世界の同業他社の中でも気候変動に関して後ろ向きのエンゲージメントを行っています。
メガバンク3行に対する市民団体主導の気候変動提案は、今年、移行計画の評価と取締役の能力という2つのテーマで提出されました。移行計画に関連して提出された提案への支持率は、昨年に比べ増加しました(例:三井住友銀行では20.9%に対し24.21%)。取締役の能力の適正評価・向上を目的とした提案への支持率は、各メガバンクとも25%以上となりました。
現在の気候変動関連の株主提案に対する支持率は、日本の大手企業による気候変動戦略の進化に影響を与えていることがわかります。例えば、2022年と2023年に投資家主導で気候変動に関する株主提案を受けたJパワーは、今年の5月に新中期経営計画を発表し、2030年度までに最大5基の国内石炭発電所を閉鎖する方針を示しています(ACCRの分析はこちらを参照)。
トヨタの豊田章男会長の再任に対する支持率が71.9%という歴史的な低水準であったことに注目し、投資家主導および市民団体主導の連合は、気候変動リスクを管理し、エネルギー転換から機会を得るための十分な能力を有していないとみなされる取締役に対抗することに、今後焦点を当てていきたいと考えています(日経、『環境提案は劇薬から常備薬へ』2024年7月6日、こちらを参照)。